TAMISA

[Chisa]本当の自分を探し求めて

Duncan先生と出会うずっと前にヨガの哲学を学んでいた頃、十牛図というものを知る機会がありました。
中国の古い時代から日本に伝わる十枚の絵と漢文によって禅の教えが説かれているものです。
これを知った時にヨガの八支則の教えや瞑想や修行の道とすごく似ていると感心したことを覚えています。その時は禅というのはヨガ同様に奥深いものだなぁと机上の学問として表面での理解でしかなかったと思うのですが、ヨガを始めて20年以上を経て改めてヨガの道を歩んできた自分の人生を見直して十牛図に描かれている道筋が今ようやくストンと腑に落ちて納得がいくなぁと感じています。
ここに十牛図を紹介させていただきます。

十牛図に出てくる一頭の牛は普段はおとなしく物静かでありながら、暴れると非常に強く手がつけられない。その姿はまるで人間の心の様子を表しているようです。ある旅人が自分の牛を探し求めるストーリーです。
一頭の牛は自分の心でもあり、自分の大切なもの、自分の求める幸せのかたちだったり、悟りといえるかも知れないし、ヨガを習得する道筋ととらえてイメージしてもらっても良いと思います。

初めから失っていないものをどうして探し求める必要があるのでしょう?持っているのに背を向けているから大切なものを見失ってしまう。自分にないものを探せば探すほど自分から遠ざかってしまうものである。

自分で自分を探す=自分のことをよく知ること。自分にとっての幸せは本人にしかわからない。誰も自分のかわりに大切なものを探してはくれない。まず探し始める旅に出ることに意味がある。

自分にとっての幸せとは何かを探す旅で一頭の牛を探していくうちに牛の足跡を見つけた。牛そのものではないけれど自分を知る手がかりをつかんだ。よく見てみるといたるところに牛の足跡はすでにあった。

ようやく牛そのものを見つけたが、牛はその姿の一部しか表していない。少し距離があり捕まえようとすれば逃げてしまいそうだ。
牛はこうなりたい自分自身の姿であり、自分と牛は海水に溶け込む塩の味のように別物ではない。牛は目標であり、目標を掲げることで成長していく。

何か新しいことを始めてみようと思っても最新のうちは身につくまで時間がかかるが、
続けていくうちにいつの間にか出来るようになっていた。今まで出来なかったことが当たり前のように出来るようになるには多くの迷いや悩みを自分なりに克服していき、その道のりで得たものは本当に身についたものとなる。牛は野性のままで出会えたことだけで満足していてはその心は、頑なで勇猛で時にはムチを使って戒めないと飼い馴らすことは出来ない。いつか馴れるように出来ると信じて鍛練を続けていくことが日々の成長の過程である。

牛を飼い馴らすということは自分自身にとっての幸せやこうなりたいという目標を見つけ、自分のことを本当に探求し、自分の知らない自分自身に気づくということ。ふと迷いや悩みが生まれ、自分勝手な思いが浮かんではあふれる。それを自覚することで自分の心のフィルターを通さずに物事の真実のありのままを受けとめる。そうして牛の鼻に結んだ縄をしっかりと引いてためらわずに進む。

旅人は見つけた牛を何とかつかまえる。飼い馴らしていくうちに牛と自分がピッタリとひとつのものになっていることに気づく。手綱を握らずとも背中に乗り笛を吹いて進むに任せている。その行き先は家であり、自分たちの本来いた場所に戻っていく。
旅人も牛ももともとは同じものであり、やっとの思いで手なづけてもただ、元に戻ったに過ぎない。それでも何も行動を起こさなかったことと同じではないと思います。

牛は自分とは別のものとして探し求めていたけれどそれは自分とひとつのものだったと気づいたところには牛のことすら忘れて何もない。牛は自分というものを認識する手段だった。牛は存在しないのではなく、始めからそこに隠れていたことに気づく。

人も牛もいない。空の境地。到達したかと思われる悟りすらない。
自分の価値観やこだわり、習得してきた様々な知識や経験も、立場やそこからくるしがらみや迷いも悩みも消え失せた。

そこには綺麗な自然の風景だけが描かれている。ありのままに見れば、この世はそのままで清らかで美しい。

町に出て当たり前の人間としての日々の生活を営む。自分に与えられた役割を楽しむ。


私なりの人生でいえば、ヨガに出会い、Tamisaにご縁をいただき、ヨギックアーツを知り、Duncan先生という人生の師匠を見つける。そこからはヨガと共に生きる自分探しの長い旅だったように思います。牛は自分自身であり、追い求めていた師匠であり、悟りへと導く手段でもありました。今はその壮大な旅で得たものをいったん手放し、空っぽの境地になり、原点に戻り源に返って、また目の前の日常を有り難く感謝して味わっています。こうして介護の仕事とヨガの仕事の両立を続けてきたことが私の社会での役割であり、それによる繋がりがたくさんの喜びを生み出しているんだなぁと感じています。

この記事を書いた人

Chisa

過労で心身のバランスを崩し体調不良を感じていたころ、ヨガを始めて体調は改善し、心の安らぎを得てヨガの奥深さの虜になりました。
ダンカン• ウォン先生のアシスタントをしながら、現在もヨギックアーツを学び続けています。

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